南アフリカで聴く虹色の歌声4 ズールーの地に育まれる

断崖が続く喜望峰、味も景観もすばらしいワイナリー、手軽に楽しめるサファリツアーなど、南アフリカ共和国(以下南ア)の観光資源は枚挙にいとまがないが、南アの魅力は自然美だけではない。様々に異なる人々が共に暮らす姿もまた、この国を特徴付ける大切な魅力のひとつだ。南アの多様さを確かめたく、2つのコンサートを訪ねた。

私設観光案内所を営むクリスが組んでくれたスケジュールの書かれたメモの最終日には、「Zululand(ズールーランド)」とあった。
ズールーとは民族名であり言語名でもある。ズールーは、南アを構成する主要な民族のひとつだ。ウィンタートン周辺においては、人口の8割強をズールーが占める。
「ズールーランド」と言った場合、厳密には、南ア東部の旧黒人自治区を意味する。ドラケンスバーグ地方は、このズールーランドには含まれていない。当時も現在も、ズールー族が暮らす地域は、狭義のズールーランドに限定されているわけではなく、同国東部に広く展開している。また、南アは9つの州から形成されており、州都をダーバンに置く「クワズールー・ナタール州」との州名にも、ズールーの名が見られる。クリスは、「ズールー族が暮らす地域」という意味で、ズールーランドと記したのだった。

クリスが紹介してくれたパーシベルを伴い、私たちは最初の目的地を目指した。
そこで何を体験できるのかと聞くと、ズールーの歌を聞き、彼らの社会を知ることができるとのこと。当初、観光客向けの文化紹介施設のようなものがあることを想像していたが、パーシベルの話から、彼がズールーの暮らす地域を紹介してくれようとしていることがわかった。パーシベル自身も、ズールー族の人だ。

民家の一室を訪ね、そこに女性が集まり、雨乞いの歌を歌う様子を披露してくれた。無病息災を祈る祈祷師のもとを訪ね、祈祷の儀式が私に向けて行われた。いずれも大変に興味深いものだったが、私にとっては、彼らが暮らす環境を目の当たりにできることそのものが、何よりも嬉しかった。
ズールーの集落に入り、砂利と泥の混じった道を、パーシベルとゆっくりと歩く。コンクリート造りの低層家屋と、円筒形をした……

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