砂に囲まれた最大都市エルアイウンに入る <現地報告>アフリカ最後の植民地・西サハラを行く(3)
一面の砂景色からは想像しにくいが、西サハラには現在、約50万の人々がいる。1975年の「緑の行進」と呼ばれるモロッコ人の入植開始以降、西サハラの民サハラーウィとモロッコ人が、同じ町の中で暮らしてきた。それぞれの町に、それぞれに異なる町の特徴がある。本連載前半では、西サハラを構成する主要な町の様子を報告する。
◆通勤客で混み合う砂上のビジネス街
真っ直ぐに伸びるアスファルトの路面は、ところどころ、押し寄せた砂に埋もれている。
「ようこそ。サハラの滞在を楽しんで。ノープロブレム」
砂漠に囲まれた検問所のモロッコ憲兵は、陽気な声でこう話し、こちらにパスポートを戻した。検問所の先にある巨大なアーチをくぐると、水の匂いが濃厚に香ってくる。
信号のある交差点をいくつも通り過ぎながら、住宅街を抜けて中心部へと進む。ホテルと、背の高いビルが並んでいる。通り沿いには、テーブルと椅子をぎっしりと並べたカフェテリアが続き、ノスノスと呼ばれるモロッコのカフェオレや、お茶を楽しむ人々で賑わっていた。
円形交差点には大きな噴水が設けられ、吹き出る水の音が途切れることはない。大通りの両側や中央分離帯に掲げられた真っ赤なモロッコ国旗もまた、途切れることなく並び、はためいている。西サハラ最大の都市、エルアイウンに入った。